行くな、行けば死ぬぞ!
-福島原発と消防隊の死闘-
中澤 昭 著
四六判/308頁 定価1,760円 (本体1,600円+税)送料209円
本書は、平成23年(2011)「3・11東日本大震災」の地震と津波で、科学技術の粋を集め絶対安全といわれた東京電力福島第一原子力発電所の原子炉が「全電源喪失」冷却する術が失われた。冷却機能を失った原子炉から高い放射線が漏れ、地域の住民に避難命令が出ている中で核燃料プールの冷却のため、自衛隊のヘリ、警視庁の警備用放水車からの放水されたが効果が見られない。この危機を打開するため東京消防庁へ出動要請がされた。
「ピーピーピー」と警報音が鳴り響く真っ暗闇の中で、隊員たちのヘッドライトだけが激しく揺れ動き、ビデオの向こう側から聞こえてくる男達の命を賭けた、熱き息づかいに、改めて私は、胸を締め付けられた。
地震発生から自己に課せられた責任を果たすまで、隊員たちは、何を思い、何を見て、何を感じて、何を得たのか、「3・11東日本大震災」で、死と向き合った消防隊員たちの、普段みせない素顔を書き留めたつもりです。
=目 次=
はじめに
目 次
序 章
「地震に強い東京になれるチャンスは二度あった」/「東京が火の海に」/「大地震は起きる」/「いつ、大地震が起きるのか」/「巨大地震のXデーは、いつか」
第一章 日本列島の大地が揺れた
その時、国は、東京は/その時、福島第一原発では/油断した津波/津波は予知できた/津波が迫ってきていた/津波体験者の証言/全ての電源が切れた/二転三転する状況報告
第二章 揺れ動く首相官邸
その時、国会では/テレビは津波の惨状を訴えた/混乱の首相官邸と消防庁では/政府の執った最初の一手/安全神話が覆された瞬間/津波火災との死闘/混乱する情報・途切れる指示命令/総理大臣の現地視察/専門家は誰もいなかった/一号機が爆発/メルトダウン/東電社長の想定外会見
第三章 日本中が怯えた日
三号機が爆発/「これから、日本はどうなる」/怒りの総理大臣/避難する社員と戻って来る社員/原子炉の冷却放水作戦/ぬか喜びの電源確保
第四章 その時、東京が大混乱になった
その時、東京消防庁災害救急情報センターでは/その時、消防総監は/退職目前の警防部長/緊急消防援助隊の出動/結婚式からの非常招集/三回の応援出動をした隊長/二四時間の救助活動
第五章 海が燃えている
気仙沼は「助けて」の声であふれていた/イギリスからのSOS/東京からの支援隊/「これで気仙沼は助かった」/消防隊の最前線/命綱は一本のホース/懐かしき故郷が燃えている/故郷はどこへ行った/男の仕事場は/父の温もりの毛布/生存者はいなかった
第六章 原発現場へ消防隊の初出動
消防車が欲しい/初めて知った「冷却放水」/消防車は出動すべきか/原発現場への初出動/「俺たちは、何だったのか」/待つだけでは何の意味もない/原子炉冷却作戦/「出動はよせ、行くと死ぬぞ」/特殊災害対策車の貸し出し/待ちぼうけの消防隊/揺れ動く妻たちの心/「お兄ちゃん、行っちゃダメ」/天皇陛下は御決意した(天皇陛下のビデオメッセージ)/空と陸から冷却放水
第七章 やはり消防しかいない
東京消防庁が出動するらしい/決断した三つの存在/極秘命令/「それでも行かない方がいい」/極秘命令が指令された/理屈より、やってみる事だ/「日本の救世主になって!」
第八章 進む勇気と退く勇気
「その作戦でやろう」/消防の出動はやむなし/総理大臣からの電話/消防戦士の妻たち/深夜の出動命令/知られざる特命出動/消防総監の背中/日本の国運がかかってる/やるべき事は、すべてやった/先遣隊が見たもの/前進を阻むもの/選んだ退く勇気/いら立つ、情報遅れ/放水は失敗か
第九章 原発現場への再突入
「やる時は、今だ!」/「やってやろうじゃないか」/ハイパーレスキュー隊突入/アラームが鳴り出した/屈折放水塔車、準備完了/スーパーポンパー活動開始/見えぬ敵との死闘/舞い上がる光る塵/待っていた屈折放水塔車/「いい水が出てるぞ」/長い一日が終わった/「ざまあみろ」
第十章 戦いすんで
深夜の記者会見/三・一一のプレゼント/生きて帰れて良かった/母からの手紙/都知事の涙/都知事の怒りの抗議/放水はセミの小便/「隊長は免震重要棟にはほとんど来られない……」/フクシマの英雄たち/私たちはヒーローではない/消防の使命は何なのか
おわりに