東日本大震災の教訓をもとに新たな消防団像を喚起する!
KSS 近代消防新書No.7 |
消 防 団 −生い立ちと、壁、そして未来− |
■後藤 一蔵著 新書判/268頁 定価(本体1100円+税)送料209円 |
地域の防災を担う大きな柱として位置づけられる消防団。東日本大震災では、多くの消防団員が犠牲になり、自らが被災者でありながら、家族、職場、団員仲間との板ばさみのなかで、長期間にわたって活動を継続せざるを得なかった。 近い将来に空前絶後の被害が予想される南海トラフ地震、首都直下地震や多発する自然災害に対して、自らの身の安全と地域全体の安全・安心のため消防団はどのように向き合うべきか、そのための新たな組織や行動のあり方を提示する指針の書! |
主 な 目 次 | |
はしめに | |
序 章 | 分団長と25人の仲間 |
―宮古市第28分団(田老地区)の110日間の活動の軌跡― | |
第1章 | 火の用心から国家統制へ |
・戦場からの手紙とむらの防火対策/江戸町火消の発展と「いろは四十八組」/川路利良と近代国家の消防政策の推進/勅令消防組規則の制定と消防ポンプの近代化/・都市の発達と常備消防部の設置 | |
第2章 | 義勇精神の高揚と戦時下体制の強化 |
・大日本消防協会の設立と義勇精神/内務官僚・松井茂と自警団/消防宣言の制定と県消防史の編纂/消防組の解散と警防団の成立/新しい消防体制への助走 | |
第3章 | 自治体消防の発足と変遷 |
・警防団の解体と消防団の成立/消防組織法の成立と政令消防団令/消防団員数の推移/分団数の推移と詰め所の機能/常備消防(消防職員)の動向と消防力の充実 | |
第4章 | 消防団不要論から見直し論へ |
・消防団活動の変化/宮城県沖地震の発生/阪神・淡路大震災の発生/北淡町におけるコミュニティの有効性/・自然災害の多発と消防団活動の多様性 事例1 新潟県中越地震 事例2 新潟県中越沖地震 事例3 岩手・宮城内陸地震 事例4 松江市・豪雪 事例5 兵庫県佐用町・台風9号による豪雨 |
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第5章 | 第5章 消防団員確保対策 |
・消防団員の高齢化とサラリーマン化の進展/団員確保対策の難しさ/平成17年の改革/高齢化社会の対応と女性団員の入団促進/公務員の入団促進 | |
第6章 | 都市部の消防団の実態 |
・都市部の消防団問題の潜在化/都市部の消防団の特異性/二つの大きな問題/伝統的行事に対する二極化/大学生(専門学校生を含む)の入団促進 | |
第7章 | 東日本大震災の発生と団活動 |
・歴史は繰り返される/東日本大震災の発生/広範囲にわたる消防団活動/消防団活動の落とし穴/長期化する防犯活動 | |
第8章 | 災害時の対応は日常活動の延長線上にある |
事例1 人的被害ゼロの町岩手県洋野町 ・過去の津波の教訓が生きる/水門閉鎖における新たな発想/垂直移動論の展開 事例2 消防団と自主防災組織の連携宮城県東松島市第10分団東名部 ・消防団と自主防災組織の連携の経緯 第1期 仮詰め所の設置と地区防災会との連携 第2期 行方不明者の確認と消防団活動の継続 第3期 新しい街づくりの始動と増加する来訪者 第4期 東名地区センターの設置と総合支所的機能 第5期 東名地区センターの機能拡大 |
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終 章 | 新たな巨大地震に立ち向かうために |
・消防団像の新たなデザイン/退避行動は地域全体の安全・安心にかかわる問題/年額報酬と出動手当は団員個人に帰属/演習訓練は災害対応訓練が中心/地域防災訓練は安否確認・避難誘導訓練が重要/消防団と自主防災組織の連携/消防団の相互応援協定の締結促進/「K・A・R」理論の展開 | |
参考・引用文献 あとがき 索引 |
= はじめにから抜粋 = |
本著を書くきっかけは、平成23年3月11日に発生した東日本大震災において、死者・行方不明者あわせて254名の消防団員の方々が犠牲となられたことである。 「千年に一度の巨大地震だったとはいえ、なぜこれほど多くの団員が犠牲となってしまったのか」という思いは、地震発生直後からあった。(中略) 今回の大震災で、津波に遭遇した経験はもとより、津波を見たこともない内陸部の住民にとっては、津波の発生と消防団活動が結びつかないという声が聞かれたのも事実である。 (中略) 東日本大震災において、各種メディアを通じて、消防団によって住民の避難誘導、救助・救出活動、さらには避難所の警備が行われたことが報じられ、消防団の活動範囲の広さを初めて知った人は多い。消防団員は地域住民の安全・安心の確保のためという観点から、必死に活動を展開したのである。 消防団の問題は、消防団関係者だけでなく国民的な問題であり、消防団と地域住民との関係のあり方を再検討することが緊急の課題である。課題解決には、消防団の歩みや組織の実態、活動内容などについて一人でも多くの国民に知ってもらうことが必要である。国民の理解を得るには、地域住民と消防団との距離を縮めなければならない。その第一歩は、地域防災訓練への消防団の積極的な参加である。「災害が発生したときは、消防団は上からの命令にもとづいて行動しなければならない」という、これまでの建前論をふりかざしていては、地域住民と共通の土俵で議論することは不可能である。 今回の東日本大震災において、多くの被災地では、消防団と地域自主防災組織が協働することで成果をあげた事例は多い。 近い将来、南海トラフ巨大地震や首都直下地震が予想され、空前絶後の甚大な人的・物的被害が想定されている。東日本大震災から得た尊い教訓は、最強で最高の教科書になることはいうまでもない。 |